ここ最近、言語化は改めて注目されている印象を受けます。
おそらく個人で情報を発信できるのが当たり前、オンライン上での仕事の普及ということもあり、言葉でしっかり伝えることが以前よりも重要視されているのだと思います。
もちろん、デザイン制作において”言語化”はとても大切なプロセスです。クライアントの要望を整理して言語化する、作ったデザインを言語化して説明できる、ということが求められます。
この記事では、デザインにおける言語化の重要性について僕なりの考えをお伝えしていきます。
そもそも言語化ってどういうこと?
コミュニケーションの基本
言語化はコミュニケーションの基本です。ジェスチャーや絵を描くなど、コミュニケーション手段は他にもあって言語化はそのうちの一つにすぎないとも言えますが、やはり言語化は基本中の基本です。
僕がこうしてタイピングしている文章も、あなたがいま頭の中で考えていることも、どうしたって言語を突き放すことはできません。
言語化はとても奥が深く、どれだけ上手に言語化できるかは個人間で差が生じます。言語化が下手だからダメとか言語化が上手いから良いとか言うつもりはありません。しかし、せっかくなら上手くなるに越したことはありませんよね。
言語化が上手くなれば相手に自分の想いを伝えやすくなると同時に、自分の気持ちを表す表現も増えるため思考の深さが深くなり、思考する・言語化するの間で好循環を生むことができます。
相手の理解度に依存しない
気をつけていてもついやってしまいがちなのは、相手の理解度に依存するということです。
分かっているだろうと説明を省いてしまったり、専門用語を多用するということはできるだけ避けたいところです。ただ、用語は会話を効率的にする一種の記号でもあるので、話し相手によってはどんどん使っていくべきだと僕は思っています。
相手が理解できていない部分は、まず自分が分かりやすく言語化できているか振り返りましょう。そもそも言語化すらしていないパターンも見かけることがあるので要注意です。
また、自分の言いたいことを伝えようとネット記事や他者の文章をただ見せるのは言語化ではありません。
それはあくまで他人が言語化したもののため、言いたいことは自分の言葉としてはっきり言語化する必要があります。その裏付けとして他者の文章を提示するようにしましょう。
デザインと言語化
まず仕事としてのデザインを理解する
デザインとは、課題解決や目標達成の設計を行い、その設計を何かしらの形態で表現することです。
ただ実際はもう少し狭義的な意味で、Webデザインといえば、Webサイトの装飾や配色など見た目を作ることを指すように”デザイン”という言葉が使われます。
もちろんそれもデザインの一部ですが、大切なのは、先にも述べた通り課題解決や目標達成の設計という本質を理解した上でWebサイトの見た目を作っていくことです。
仕事としてデザイン制作を行うのであれば、そのデザインはクライアントのために、デザインのターゲットのために作られるべきなのです。
分からないことは確認する
クライアントの要望をデザインに反映させるためには、思い込みは禁物です。
打ち合わせをしていて、曖昧な部分や理解できない部分が出ることはよくあります。その時はしっかり確認するようにしましょう。
分からないことをそのままにして勝手な憶測でデザインを制作してしまうと、ほとんどの場合クライアントの思い描いていないデザインになってしまいます。
この分からない部分を明確にしていくために、何が分からなくてどうすれば分かりそうか、しっかりと言葉でコミュニケーションをとる必要があります。
加えてクライアントが言葉にできないことを言語化するのもデザイナーの役割だと僕は思っています。そのためにも言語化をするための力は必須ですね。
作ったデザインを説明できる
なぜそのデザインにしたのか言葉にして説明できることも大切です。
なぜそのコンセプトにしたのか、なぜそのフォントを選んだのかなど、大きなことから細かいことまで全てを説明できるようにしましょう。
前述したようにデザインとは課題解決や目標達成のための設計が本質です。なぜそのデザインにしたのか説明できないということは、設計として成り立っていないということです。
Webデザインであってもグラフィックデザインであっても、どの分野においても作ったデザインを説明できるということは必須スキルです。
デザインにおける言語化の重要性
言語化できるデザイナーは信頼できる
Webページのメインビジュアル案をクライアントに提示したとします。そして、「写真と文字はなぜこの配置にしたのですか?」と聞かれました。
その答え方一つでも信頼度が違います。
「パッとみて良い感じの位置だからです」
「なんとなくで理由は特にありません」
確かに見た感じでしっくりくるデザインであったとしても、その理由を説明できないとなるとクライアントは不信感を抱きます。
「中心で区切りをつける二分割のレイアウトにして、メリハリのある見やすいデザインにしました」
「余白は結構ありますが、三分割法というデザインが綺麗に見える理論をもとにしています」
このように、なぜそのデザインにしたのか理論などを交えながら説明できればクライアントも安心感を覚えるはずです。
さらに、クライアントのブランドイメージやコンセプトなどを織り交ぜることができればより良い説明になります。
「貴社のブランドイメージにもあるシンプルで無駄のないことをメインビジュアルでも表しています。写真と文章の区切りを中心で分けることによってメリハリをつけながら見やすくし、シンプルで余計な装飾のないデザインにしています」
どうでしょうか。
しっかりと考えてくれたということが伝わってきますよね。
デザインの質を向上させる
デザインの制作プロセスにおいても言語化は重要な役割を担っています。
デザインを考える時、クライアントやチームメンバーとコミュニケーションをとる時など様々な場面で言語化が必要ですよね。
言語化能力が優れていれば自分の思考や見たものをより的確に言葉へ変換することができるため、デザインへの落とし込みの精度が上がり、コミュニケーションではより的確なやりとりをすることができます。
前述もしましたが自分の思考だけではなく、クライアンやチームメンバーが言葉に表すことのできないことを代わりに言語化するのもデザイナーの役割だと僕は思っています。
感覚的に分かっていることや頭の中にふわふわと浮かんでいることを言語化することによって、お互いのデザイン制作の質を向上させていきましょう。
言語化を上達させるための習慣
読む・聞くというインプット
言語化上達の習慣もインプットとアウトプットに分けることができます。まずはインプットから紹介すると、それは読む・聞くです。
読むというのは、本や新聞などその道のプロが書いたり編集した文章に触れることです。分かりやすい文章とはどういう文章かを知り、文章のテクニックや語彙を身につけることができます。
本は小説やビジネス書など活字の本がおすすめです。読んでいて分からない言葉があれば調べましょう。スマホで検索するだけ簡単に意味を調べることができます。
書く・話すというアウトプット
自分の想いや考えを言語化し、書く、あるいは話すというアウトプットを行い、言語力を磨いていきます。
最初はうまく表現できないことがあるかもしれませんが、とにかく言葉にして外に出すことが大切です。インプットとアウトプットが上手く循環するようになってくると、この気持ちはこう表現すれば良いのかということがストンと落ちてきます。
日常で感じた自分のさりげない気持ちでも、世の中で起きているニュースについてでも、何でも良いので書き出してみましょう。
インプットのために読んだ本の感想を書くのも良いですね。今はネットで簡単に他の人がどう言語化しているのか見ることができるので、覗いてみると新たな発見があるかもしれません。
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